飲食店における顧客エンゲージメント|高めるための方法と具体的事例を紹介

飲食店における顧客エンゲージメント|高めるための方法と具体的事例を紹介

ブログ

一般社団法人日本フードサービス協会がおこなった調査(『外食産業市場動向調査 平成30年 年間結果報告』を参照。)によれば2018年の外食市場の売り上げは前年比102.3%です。これは2015年より4年連続で前年実績を超えており、堅調に推移しているといえそうです。

しかし、日本全体の胃袋の数が減っていることを鑑みれば、手放しに楽観できるものでもありません。持続的に成長していくためには、不断の努力をする必要があります。そこで最近注目を集めているのが「顧客エンゲージメント」という考え方です。お客さまとの関係性を評価する指標であり、これを高めることでより安定的な経営につながるとされます。この記事では、「顧客エンゲージメントって何?」という方に向けて、その重要性を解説していきたいと思います。

顧客エンゲージメントとは、「お店とお客さまの信頼関係」

顧客エンゲージメントとは、お店とお客さまの信頼関係を指す言葉です。双方の「つながり」の強度を測る指標として最近よく用いられるようなってきており、カスタマーエンゲージメント(customer engagement)などとも呼ばれます。

顧客エンゲージメントが重視されはじめた背景としては、「インターネットの普及による情報過多」が一番に挙げられます。顧客側はインターネットを通じて、さまざまな情報に簡単にアクセスできるようになりました。そういった環境下では「他店との差別化」が大きな課題となり、新規顧客の開拓のハードルが高くなっているといえます。そのため、すでに利用してくれているお客さまを優良顧客に育てていくという考え方が重視されるようになってきているのです。

顧客満足度(CS)やブランド・ロイヤリティとの違いは?

顧客エンゲージメントは、主に行動に着目した概念です。たとえば、お店を知人にすすめたり、お店のSNSで「いいね!」を押したりと、お客さまによる具体的な行動が指標となります。

一方でブランド・ロイヤリティは、お客さまがお店に執心するようなイメージで、その感情の強さを示します。ブランド・ロイヤリティでは、顧客側が持つブランドへの印象が数値化されます。また顧客満足度は、お客さまがサービス・商品にどれぐらい満足しているかを示す指標です。

つまり、お客さまが感じる満足度やお店に持つイメージ(ブランド・ロイヤリティ)が、顧客エンゲージメントにつながっていきます。言い換えれば、顧客エンゲージメントは顧客満足度やブランド・ロイヤリティの上位概念に位置付けられます。

顧客エンゲージメントを強化することによるメリット

顧客エンゲージメントを高めると主に以下のようなメリットが得られると考えられます。

  • リピーター層の醸成
  • 口コミ効果
  • 宣伝コストの低減
  • お客さまとの対話へのきっかけ

顧客エンゲージメントを重視することは、既存客を大切にすることであり、リピーターを増やすことにつながります。リピーターはお店に対して総じて好感を持っていることが多く、「口コミ」や「いいね!」などポジティブな行動につながりやすくなります。お客さま自身が宣伝をしてくれるので、宣伝コストの節約にもなるでしょう。またお店とお客さまの関係性が強くなることで、お互いに対話をしやすくなり、お客さまの意見を反映したお店づくりにもつながっていきます。

顧客エンゲージメントの構成要素とKPI

顧客エンゲージメントの概念はまだ誕生してから間もないため、「どのような要素で構成されるのか」「どのような指標で図るのか」は一律にはっきりとしたものは存在しません。また、基本的にはウェブサイトやウェブサービスなど、オンライン上での顧客との関係性を示すのが一般的です。そのため、飲食店における顧客エンゲージメントの定義についても確立されていません。ここでは考えうる構成要素・KPI(重要業績評価指標)の一例をご紹介します。

①顧客の生涯価値(リピート率、来店間隔 など)

②口コミによる能動的な行動(食べログの評価、自店SNSのいいね数 など)

③顧客によるフィードバック(アンケート回答数、問い合わせ件数、クレーム件数 など)

顧客エンゲージメントといっても決して難しいことはなく、飲食店を経営している方であればなじみのあるものばかりではないでしょうか。これらを重視して、お客さまに愛されるお店を目指していくのです。

顧客エンゲージメントを上げるための取り組み事例

最後に、顧客エンゲージメントを向上させるための具体的な方法をいくつかご紹介したいと思います。

会員ランク分け

来店回数や購買金額に応じてランク付けの仕組みをつくることで、顧客生涯価値アップにつながります。かつては「お客さまはみな平等」「お客さまを差別してはいけない」などの考え方が主流でしたが、あえてお客さまを区別して上顧客を優遇します。

注意しないといけない点としては、ポイントカードとは違うということです。ポイントカードが「たまる」のに対して、ランク付けは「上がり」ます。「今月はあと1回利用するとランクが上がるから、足を運んでみよう」といったことにつながるかもしれません。

口コミ・いいね! による特典

顧客エンゲージメント向上を促すための方法として、最も気軽にはじめられるのが「口コミやいいね! に対する特典」です。「インスタグラムに写真をアップしてくれたら、○○をサービス」「フェイスブックでシェアしてくれたら〇円割引」など、最近ではいろいろなお店でこういったサービスを目にするようになりました。この取り組みははじめやすいですし、あまり効果が見られなければ途中で辞めることもできるので、まずはここからスタートしてみるのがいいのではないでしょうか。

フィードバックへのインセンティブ

店頭のアンケートや問い合わせに対して付加価値を用意するのもいい方法です。人気焼き肉店の「牛角」が、お客さまからのクレームを300円の割引券で買い取るということをやってお店の成長につなげたというエピソードはあまりに有名です。お客さまからのフィードバックはサービスの質向上だけでなく、顧客情報の収集にもつながり一石二鳥となります。

まとめ

顧客エンゲージメントの考え方では、お客さまとの関係性がなによりも重要です。これを高めたいのであれば、お客さまが「他店ではなく自分のお店を選んでくれる理由」「お店に求めていること」をしっかりと把握するようにしましょう。そのうえで、顧客エンゲージメントを高めるための具体的な方策をとり、お客さまといい関係づくりをしていくことが大切です。


参考: